NORIKO TOMITA
作 品 リ ス ト
群がる Ⅰ / 群がる Ⅱ (2009) / 群がる (2010) / 催眠 (2012)
網戸用メッシュ、化繊メッシュ / 手染め、油性ペンで着色、ミシン加工、オリジナルテクニック / 170 x 200 x 7 cm, Valcellina Award 2009 (イタリア) / 130 x 230 x 10 cm / 180 x 450 x 25 cm, 日本現代ファイバーアート展 / 178 x 370 x 5 cm, TEXTILE PRESENT (アキバタマビ21)
「素材からうまれる文様 -限られた世界の 果てのない営み-」
私の過去作品には、日本のどの家にもある網戸を用いた作品が多くあるが、それは 「網戸で作品を作った」ということではなく「網戸からの発見によりうまれた作品」であると考えている。身近なものでありながらそのものの認識はしていても、意識して見ていない、知らないというものが日常にはたくさんあるのではないかと思う。網戸の作品に関しても、日常の存在としての網戸から離れ網戸がもつ本質を知ること、つまりそのものが「何から出来ていて、どのように作られ、どんな特性をもっているのか」を知ることで、その素材ならではの形にたどり着いたということであり、特性や性質を追求することが結果、その素材でしかできない表現=オリジナリティにつながったと確信している。
また同時に、これらの網戸の作品は「自由でありながら拘束されているもの」を考えるという意味もある。それは「観る側の網戸に対する固定観念からの解放」であり、網戸の存在の意義を失うことは、これらの作品において重要な意味を持つと考えている。作り手である私自身が、日常の存在としての網戸から離れることにより、観る側もまた、網戸に対しての自身の認識から自由になり "意識して見る" ということを実感できるのではないかと思っている。
(注)制作では網戸そのものではなく、網戸のメッシュ地を使用しているが、ここでは網戸とする。
Connections Ⅱ (2021)
網戸用メッシュ、化繊メッシュ / 油性ペンで着色、手染め、ミシン加工 / 135 x 188 x 7 cm / BankART AIR 2021 WINTER (横浜)
仏家 (2011)
荷造りテープ、造花、花輪、廃棄された養殖網 / 括る、梳く/ 粟島アーティスト・イン・レジデンス 2011
島には廃屋に加え、漁師を廃業する際に捨てられた漁網が大量にあり、これらを用いて制作しようと考えた
漁網に荷造りテープを一つ一つ括り梳いたもので小屋を覆い、それが風になびくことにより「廃屋が反応する=生きている」として表現した。風が吹いた時に体毛のように家の部位によって動きが異なるよう、テープは縦の配列と横の密度を変えて括っている。
この小屋の全面には海が広がり背面には山が、また裏手の坂を上り小屋を見下ろせば海の向こうに讃岐富士が見える。“ここからでしか見られない景色”を作ることにより、島の多様性を感じてもらえればと思う。
シャングリラ (2014)
荷造りテープ、花輪、養殖網 / 括る、梳く / 六甲ミーツ・アート 芸術散歩 2014
繊維の段の根元を紫のグラデーションに着色し、その日の風の強さや向きで色の見え方が異なるようにした。桃源郷をテーマに自然による一期一会の景色を見せる作品である。
Universe (2015) / Universe Ⅱ (2015) / Universe Ⅰ (2015)
油性ペンで着色したビニールホース / オリジナルテクニック / 192 x 192 x 3 cm, 多摩美術大学創立80周年記念展 "タマビクオリティ1935-2015" / 120 x 120 x 5 cm / 120 x 120 x 3 cm, BankART AIR 2015 (横浜)
「限りなく布に近い存在」
織布が「平面の中に組織の構造をもつもの」ならば「組織のある平面状のもの」は限りなく布に近い存在となるのではないかと考えた。
このパーツの中心には糸のような線が見えるが、これはホースの円断面の着色によって現れた反射であり、実際には存在しないものである。
この作品は、実在する2次元の線と、現象による3次元の幻の糸によって紡ぎ出された "布" なのである。
Universe Ⅲ (2019)
油性ペンで着色したビニールホース、2015年作製の同パーツ / 120 x 120 x 3 cm / BankART AIR 2019 again(横浜)
私の過去作品に、BankART AIR 2015にて「限りなく布に近い存在」というテーマで制作した"UniverseⅠ"がある。それから4年後の2019年に、新たに制作したパーツと、2015年に制作したパーツとを組み合わせた“Universe Ⅲ”を制作した。これは経年変化による「時間の経過が生み出す模様」を表現した作品である。過去のパーツと、その4年後に作られたものとが混じり合うことで、深みのある独特な模様となる。
底に在りて光り輝く (2016)
円形シール、廃棄された養殖網 / エンボス加工 / 380 x 720 x 3 cm / 瀬戸内国際芸術祭 2016 (SOKO LABO・粟島)
廃棄された養殖用の漁網に付着していた魚のうろこが美しかったことから、丸シールを鱗のイメージで使用した。
シールを上下に挟んで貼り付け、ペンチで真空パックのように空気を抜き網の模様を強調している。丸シールは、金銀2色の大中小3サイズで、それぞれある規則に沿って配置されている。小・中サイズは網の目中央の十字部分のみに、大サイズは十字以外にも経や緯に合わせて置かれている。
私は大学で織を専攻していたが、織物は経糸と緯糸という絶対的な縛りの中に条件を与えることで表現が広がっていく。ルールや条件は、新たな表現への道しるべになると考えている。
Resonance (2018) / Confusion (2018) / Empathy (2018)
網戸用メッシュ、化繊メッシュ、ラフィアテープ、養殖網 / 油性ペンで着色、手染め、ミシン加工 / 200 x 265 x 4 cm, Textile Art of Today (スロバキア、ハンガリー、チェコ、ポーランド), 200 x 200 x 6 cm, TXT Prize 2017 (スロバキア) / 178 x 178 x 4 cm
これまで結ぶ、組む、裂く等テキスタイルの基本にして原始的ともいえる手法で制作してきたが、この作品では手染めやミシン加工によって出来た、それぞれ透過性の異なる布片を重ねて1つのパーツとし、ホチキスで固定するという従来にない布の成立を試みた。織のように経と緯の組織を意識しつつも、編みのように一目ずつ作られ、また籠のように目と目の間に空間が出来るようパーツを組み1枚の布にしているが、織でも編みでもない布なのである。
手仕事によるわずかな歪みや不揃いの積み重ね、更には布に定められた独自の規則から逸脱したパーツがそのまま、作り手の感性を伝える布の表情や模様となっている。作者の性格に起因した無意識の手癖のようなものが、規則を感覚に変えるのではないかと考えている。
なわばり -コーヒーシェルター- (2007)
使用済みコーヒーフィルター、麻糸、アパカ / 二重レース織、オリジナルテクニック/ 280 x 100 x 60 cm
Synchronicity (2016)
結露予防モヘアテープ (ポリプロピレンテープ)、金属刺繍糸 / 手刺繍 / 70 x 140 x 4 cm / Contextile 2016 (ポルトガル)